2004-10-10 ぷよぷよフィーバー長野NASA大会詳細

第2回ぷよぷよフィーバー長野NASA大会報告

 大会前日、長野NASAの常連がふと聞いてきた。
「あのひとがシューターの服部さんですか?」
 ぷよぷよだけやっていると意外に思うが、服部さんは他のゲームでも超一流の腕前を持つ。特にひとりで2つのレバーを操作する「服部(左手)+服部(右手)」の2人同時プレイシューティングは芸術の域だ。昨日彼はギガウイング2超絶プレイのビデオ撮りに取り組み、丸一日かけて完成させていた。彼の日記には「プレイ時間が15時間を超えたあたりからは考える事さえ止めていたように思う」「最後の30分間は力ではなく、心でプレイしていた」とある。まさに全てを出し切っていたのだ、大会2日前に。
 そのせいか、彼は大会前日のぷよ対戦会でも全くプレイせず他人のぷよ対戦を遠くからずっと眺めていた。彼ほどになれば見るだけでも十分調整になりそうだ。しかし長野勢や遠征者はそれでは物足りない、せっかく服部というビッグネームと出会えたのだから横並びで対戦して強さを実感してみたい。皆のさそいで服部さんが対戦席に座ったのはもう22時を過ぎたころだった。

 さすがに強い。さかな王子で不定形で組み合っても連鎖量で圧倒してしまう。ただ夜も更けてきて対戦会はかなり和んだゆるい感じになっていて、服部さんを止めるには真剣さがもうひとつ足りない感じもした、ただ一人を除いて。
 FALさんは、戦う目をしていた。
 彼はぷよぷよ全体のことを懸命に献身的に考えている。SANAさんなどと共に名古屋で定期的なぷよ通大会(BOXQ2杯)を開き、コンパイルやAJPAの消滅を乗り越え、今では全国でいちばんのステータスを持つ通大会に成長させた。プレイヤーとしてもかなり完成された通のテクニックを持っており、主催者から離れプレイヤーとして専念できる今回は心に期するものがあるだろう。……それとも、もっと遠くを見ていたのか。
 FALさんは、服部さんを止めた。


 翌日、台風は長野をそれ、吹き戻しの強風の中、大会が開催された。
 愛知・三重勢が7人、新潟が3人、関東が2人、関西が1人、長野が5人、で人数的にも遠征者優位となった(御遠征ありがとうございます)。
 人数は前回と同じ18人だが、メンバーはより豪華になった。東京大会の覇者服部さんをはじめ、2ぷよの雄やつか隊長、ディフェンディングチャンピオンのえすっちさん、紅一点の実力派あきさん、名古屋の重鎮北斗37さん、通時代に一世を風靡したあっちゃん、などなどいろんな意味で面白い。
 僕の私見ではこんな感じだった。
  ・通中心でフィーバーも少しやる人……6人
  ・通もフィーバーもやる人……3人
  ・フィーバーになってやりこみはじめた人……7人
  ・以前やっててフィーバーで復帰した人……2人
 通中心の人はアルルを使い、連鎖を好み、もともと安定した実力を持っている。フィーバーからはじめた人は配ぷよ数が多めのフィーバーキャラを好み、速攻とフィーバーを軸に戦い、実力は様々という印象がある。
 違うタイプ同士の戦いは今後のぷよフィの動向を見る意味でも要注意だ。

(えすっちさん(アコール先生) vs FALさん(アルル))
 1回戦第1試合はいきなり注目の戦いとなった。
 えすっちさんは、前回アルルで優勝しながらアコール先生に転向、いちばん難しいといわれる配ぷよに1ヶ月取り組んできた。FALさんは通で鍛えたアルルプレイヤーだ。

 1戦目アコール先生は序盤で良形を作れず(置きミス?)アルルの先行発火にフィーバー入りするのがやっと、2度目のフィーバーに入れず破れた。
 2戦目アコール先生はうまく折り返しを作成し相手の催促を大きい催促で返して優位に立った。そこから小競り合いがあり先生が先にフィーバー入りし、アルルはピンポイントに来たおじゃまぷよをギリギリで処理できず潰れた。
 3戦目アコール先生は序盤きれいな形から相手の催促に合わせて大きい9連鎖を先行発火した。アルルはなんとか10連鎖するが岩ひとつ返せずフィーバーへ入った。ここでアコール先生が潰しか大連鎖を作っていれば有利だったが、アルルにフィーバー伸ばし8連鎖を許してしまい、しかも大連鎖の形を作れず、時間を十分得たアルルはアコール先生の初回フィーバーの間に9連鎖をサクッと組んで逆転した。

 アコール先生は1戦目の序盤、3戦目のセカンドで組みにくさに泣いた。しかし準備期間1ヶ月と考えると十分な成果を出せていると思う。
 3戦目、先生は1回目の大ぷよは消すだけで利用できなかった。序盤が終わってアルルが最初の催促を送るところまでで画面上のぷよを数えると、先生34・アルル32でほとんど同数だ。配ぷよ数は1周で先生42・アルル32と10も差があるが、1回大ぷよの消しが入るとそれだけで差はなくなってしまう。つまり配ぷよの多さを生かすなら大ぷよは消せないし、その上で安定して組まないとならない。

(やつかさん(アルル) vs T・Kさん(ユウちゃん))
 続けて第2試合も熱い戦いになった。
 名古屋の連鎖力を代表するプレイヤー「かめちゃん」ことT・Kさん。ぷよを始めたころはすでに不定形全盛で、当然のように不定形を鍛え上げた新鋭やつかさん。
 フィーバーキャラ vs アルルを考えると、配ぷよ数の多いフィーバーキャラは同じ時間で(アルルと同じ連鎖量)+(催促)が組めそうな気がする。しかし現実にはちぎりや消しが発生し、催促の小回りの差もあり、連鎖勝負ではむしろアルル有利とされている。
 3つ・4つ・大ぷよの組みがもっと進化すれば逆転できるのだろうか? T・Kさんはその答えにだいぶ近いところにいる。彼はユウちゃんを使いながら速攻やフィーバーに頼らず連鎖勝負を挑むタイプだ。平積み・座布団に似た独特の形はスキがあるように見えて、連鎖尾や合体で常に3〜4連鎖を保持していて防御力が高く、安定して12〜14連鎖を打つ。半端なアルルだと連鎖対決で一蹴されてしまう。
 やつかさんはもちろん半端なアルルではない。不定形で速く、スキもあまりない。

 1戦目、アルルが最初の催促を送ったとき、ユウちゃんは既に十分な連鎖尾兼催促が完成していた。ユウちゃんが大きく返してアルルが2段埋まり、ユウちゃんは即8連鎖を発火した。ユウちゃんはこのとき「アルルが埋まった」と判断したのかもしれない。しかしアルルは辛うじて埋まっておらず、ぷよの流れも良く10連鎖で返すことができた。連続フィーバーでユウちゃんにも逆転の可能性があったが、途中の操作ミスがありアルルがまず一本取った。
 2戦目はユウちゃんが崩し気味に催促の5連鎖を発火。アルルは本体の8連鎖を打ってフィーバーに入り、ユウちゃんは7連鎖を返してフィーバー入りする。アルルはフィーバー伸ばしがうまくいかず何も送れないままフィーバーが終了し、ユウちゃんは7連鎖・8連鎖を打って逆転、アルルは2度目のフィーバーに入れず負けた。
 3戦目はユウちゃんがやや迷ったものの全消し、降ってきた座布団4連鎖をなんと2連鎖トリプルとして発火しアルルを2段埋める。しかしここからアルルは巧妙な2段堀りを作成、追い打ちがきたところに合わせて7連鎖発火、ユウちゃんのフィーバー中に追加攻撃を組み上げ勝ちきった。

 ぷよのスタイルもいろいろあるが、T・Kさんはかなり大幅に連鎖力を重視する。ぷよフィに入るのにもあえてフィーバーキャラを選び、3個4個ぷよでの組みを楽しんでいる。野試合18連勝も含めそのパワーは既にかなりの域に達しているが、大会では残念ながら1・3戦目と勝ち急いで失敗した。本体発火を目指したやつかさんのテクニックも光っていた。

(Fournyさん(さかな王子) vs ひささん(アルル))
 ひささん vs Fournyさんは、僕はかなり面白い組み合わせだと思っていた。ひささんは通屈指の階段折り返し使いだがフィーバー独自の戦法にはあまり興味がない、一方Fournyさんは速攻主体にフィーバーの戦術を追求するプレイヤーである。
 階段折り返し戦法はフィーバーになってやや復権したようだ。通では不定形の柔軟性に劣ると思われがちだったが、潰しにくく大連鎖勝負になりやすいフィーバーでは階段折り返しの価値はけっこう高い。ハイレベルな階段折り返しにフィーバーの速攻戦法がどれほど通用するのか見たかったのだけど、1回戦のひささんは何か様子がおかしかった。どうもあまりぷよが見えていない様子だった。

 1戦目、アルルは折り返し部を急がない組み方で、さかな王子の5ダブを簡単に食らってしまう。さかな王子は全消しで追い打ちして先勝した。
 2戦目、アルルはまたしても速攻を警戒していない感じで組んでいく。たださかな王子は発火のチャンスを逃してしまいアルルに折り返しを完成される。さかなの7連をアルルが9連で返して勝利。
 3戦目、アルルは比較的スキのない折り返しをしている。しかしあまり安全を確認せず2段折り返しに組み換えたりしていて危なっかしく、いつものひささんの調子ではない。さかな王子から5連鎖が来るがアルルは8連鎖の発火ぷよを間に合わせた。なのに何の錯覚かアルルがこれを発火ミスし、フィーバー逃げせざるを得なくなる。このときさかな王子はかなりいい形で普通に伸ばして発火していれば勝ちだったが、これができずに潰れてしまう。

 結果として、あまり芳しくない試合内容となってしまった。ひささんの乱調でFournyさんも十分勝機があったが、Fournyさんの速攻もふだんの鋭さが感じられなかった。大会1回戦ではよくこういうことが起こる。

(しるるんさん(リデル) vs FALさん(アルル))
 しるるんさんは珍しいリデルの階段折り返し使いだ。大ぷよが利用しやすい階段積みは大ぷよが2回出てきて3つぷよの少ないリデルの配ぷよには向いている。階段積み自体はフィーバーで少し有利になったし、キャラクター的にも大連鎖勝負は得意だ。FALさんは百戦錬磨のアルルだが、大連鎖の勝負でもリデルは引くわけにはいかない。

 1戦目はアルルの先行12連鎖にリデルがあっさりと10連鎖を打ってしまい負けた。
 2戦目は巧みな大ぷよの使い方でリデルがかなり早く折り返しを完成して先行発火。しかしこれは9連鎖で止まり、アルルの連鎖も7トリどまりでわずかに返せずフィーバーへ入った。リデルの後発フィーバー中にアルルは7連鎖を送るがこれは潰しにならず、アルルは2度目のフィーバーに入れず負けた。
 3戦目は折り返しを組み辛い配ぷよでリデルは速攻5連鎖を選択する。アルルは連鎖数を正確に見切って本体7連鎖をしっかり完成させて発火、そのまま勝利した。

 しるるんさんはリデルを専門にやっていて、配ぷよの特性をよく知って組んでいる。だが今回はやや戦い方が淡白になってしまった。アルルは何もしなければ12〜14連鎖くらい組んでくるので、フィーバーキャラで連鎖勝負するなら積極的に攻撃を仕掛けるべきと思うのだが、そのタイミングと大きさはとても難しい。しっかり研究して粘り強い攻撃をしないとアルルには勝てないような気がする。
 一方アルルに対する速攻は配ぷよ数の差で決まりやすくなっている。序盤はアルルに対して有利に立ちやすい時間なので、特に初中級者はもっと速攻を重視していいと思う。最初のうちは速攻とフィーバーを利用して戦って、連鎖力を鍛えて速攻後の攻撃や速攻できないときのフォローをしっかりさせて強くなる。フィーバーから始めたプレイヤーはそのような上達の道もあるかもしれない。

(やつかさん(アルル) vs FALさん(アルル))
 FALさん vs やつかさんは今大会唯一の不定形を主戦法とするアルル同士の対決となった。不定形はもともといろんな状況に対応できるように進化した戦法であり、フィーバーになってもあまり形を変えなくていい。ただ小連鎖で降るおじゃまぷよが激減したため、催促は大きめにタイミングはやや遅めになった。大きく組み合う展開になりがちなので序盤は形良く組んでいった方が良さそうだ。今大会を通じてFALさんはかなりわかりやすく組んでおり、それはフィーバー用に微調整された結果ではないかと思われる。
 やつかさんはどちらかというと平積みのような形を好み、相手からは見切りにくい形にすることが多いように思える。

 1戦目、FALさんは本線を一部巻き込む6連鎖の催促を打ち、やつかさんに8トリの本命を打たせるが、自分の連鎖を伸ばすことができず負けた。
 2戦目、両者ほとんど同形の序盤で、やつかさんは合体を作りに行くがこれがあまり上手い形にならずFALさんの先攻に潰れた。
 3戦目、序盤は、

 このようにほぼ同形だが、ここからやつかさん(1P)は右下の黄色を連鎖に組み入れる形を選び、FALさん(2P)は右下の黄色が連鎖尾で最後に消える形を選ぶ。FALさんはここからほぼ一直線に組んでいき流れよく13連鎖を完成させる。やつかさんも大きく組んでいたが途中で本線が止まってしまう。組むだけならFALさんの形の方が自然な流れに思えるし、やつかさんの形は見切りにくい分失敗もしやすい気がする。自然な形で大きく組む、という部分でFALさんの方がフィーバー的で、そこに勝因があったのではないだろうか。


(あきさん(クルーク) vs ひささん(アルル))
 ぷよぷよの組み方には個性が出る。たとえ初中級者でも「階段折り返しはできるがつぶしに弱い」「速攻はできるが折り返しが遅い」などはプレイヤーの個性で、その人がいままで何を考えてどんなぷよぷよをやってきたのかそのまま現れている。しかし通は戦法が究まり上級者はほとんど不定形となりマニアックな部分でしか個性を感じにくくなっている。
 ひささんは階段積みで、多彩な右折り返し・つぶしへの耐久力・連鎖尾兼催促の多様性を持ち、通には珍しくわかりやすい個性を確立させている。
 一方フィーバーでは、キャラクターを選ぶところから個性が強く出る。あきさんはいわゆるキャラ萌えでクルークを選んでいるらしいが、大連鎖だけでなくフィーバー絡みの長期戦でも実力を発揮し、クルークの中でも個性が際立っている。
 個性的なプレイヤー同士の戦いは面白い。ただこの組み合わせはどうもあきさんの方に少し苦手意識があるらしい。

 1戦目、お互いじっくり派なので序盤はあまり動かずに組み合う展開、アルルは4連鎖の催促を作りに行くがクルークは構わず伸ばして先行発火。これにアルルは作った4連鎖を合わせてしまう。クルーク11連鎖は65000点あり、アルルは8トリを返すのがやっとでクルークの勝ちとなる。
 2戦目、催促の送り合いからクルークは意図的に本命8ダブを発火。アルルは10連鎖を間に合わせてフィーバー入りした。通なら勝負がついてるところだが、あきさんのクルークはここからのフィーバー勝負がかなり強い。クルークのフィーバーが終わった時点で小予告ぷよ1つ残っただけのほぼ完全相殺となる。アルルの追い打ち連鎖も乱れていて、クルークは2回目のフィーバーに向けて画面上にぷよを溜めていく。しかしここで気が切れたのかクルークに小さな相殺ミスがあり、アルルの5連鎖に相殺が追いつかず星を落とした。
 3戦目は2戦目からの流れなのかクルークに小さなミスが出ている。ひささんのアルルも本調子ではなさそうだがギリギリで3連鎖催促を送り、その後クルークをフィーバーへ追い込むことに成功、本命発火して勝った。

 ひささんはフィーバーの戦い方にいろいろ苦慮している様子だが、自分の通での戦法をいちばん生かせる方法として、相手をフィーバーへ追い込んで本命発火するという勝ちパターンを見いだした。通派のアルルも少しずつフィーバー的な戦い方を取り入れるようになってきている。

(骨。さん(アルル) vs マスクドおさるたん(リデル))
 マスクドおさるたん、ことおさるさんはぷよフィオンライン9割以上の勝率を上げ、リデルプレイヤーの筆頭として名を上げている。ぷよ歴は長いがやや休眠期間があり、2ぷよで目覚めて、フィーバーであえてリデルを選んで大きく飛躍した。アルルでも良かったはずだし、新キャラもユウちゃん・カーバンクル・ラフィーナが多い中、なぜリデルだったのか?

 1戦目、配ぷよは●●型で大ぷよを利用して折り返しを組みやすいパターンだ。リデルは階段折り返しを問題なく完成させた。骨。さんのアルルは形のいい挟み込みを崩して潰し気味に4連鎖催促を送るがリデルは8連鎖を間に合わせて勝った。
 2戦目、配ぷよはまたしても●●型だった。これをリデルはあえてGTR狙いで置いていく。結果としてリデルは全消しを取り逃し、一方的全消しをしたアルルがリデルにおじゃまぷよを降らせ、そのまま逃げきった。
 3戦目はGTRを作りやすい配ぷよでリデルはきれいにGTRを組んで催促を先攻した。アルルに打たせて後発で連鎖を発火したがこれが途中で止まってしまい、勝負は決まってはいなかったが、リデルは戦意喪失気味に負けた。

 2戦目、リデルはなぜ階段折り返しに行かなかったのか? 1戦目の様子から速攻を警戒したとか、もともとGTRが得意だからとか、合理的な理由は考えられるだろう。しかし大会において1戦目勝ったパターンをあえて避けるのは不思議だ。本人に聞いてないので推測にすぎないのだけど、僕には「同じことをやりたくない」という性格がついそうさせたかのように見えた。それはつまり「どんどん新しいことをやりたい」という性格だ。
 リデルを選ぶあたりも、しかも緻密にフィーバーモードの研究をしているあたりも、おさるさん独特の進取の気性が働いているように見える。
 服部さん、T・Kさん(かめちゃん)はいろんな戦法や連鎖を自分で考え出して強くなったプレイヤーだ。彼らがアルル以外のキャラクターでプレイしているのは、自分でいろいろ考え出すのが好きで、あらゆる可能性を探ることの大切さを知っているから、という理由が大きいように思える。今オンラインで勝っている人は、アルルの戦い方をフィーバー的に微調整している人が多いが、新しいことをやるという意味ではフィーバーキャラを使って戦う方がずっとアグレッシブだ。可能性を探ることが強さに直結するかどうかはわからないが、どの世界でも頂点に立つ人は、間違いなく自分でいろんなことを工夫し、考えている人から出現するのだ。
 おさるさんも非常にアグレッシブで、今後も目が離せない存在だ。ただ大会ではちょっと裏目に出てしまった。結果だけ見れば「魔が差した」という感じだ。

(服部さん(さかな王子) vs FALさん(アルル))
 2004年5月、今は無き明大前ナミキで行われたミスケン vs 服部100本勝負はぷよ界にとって特別な意味を持っていた。ミスケンこと三須健太郎さんは、不定形の草創期から活躍し、長くぷよ通対戦日本一と謳われ誰にもその座を譲らなかった。しかし先に行われた30本先取は服部さんが取り、場は騒然とした。二人はその熱さをぶつけあい、意を決して全く予定になかった100本勝負を開始した。その対戦画像が今服部さんのサイトで少しずつ公開されており、これは紛れもなく今ぷよぷよにおけるいちばん貴重な宝物だ。
 二人はほぼ互角の戦いをした。しかしミスケンさんは残念なことに仕事のためにぷよぷよの第一線を離れることになる。
 ミスケンさんが引退すること、ミスケンさんと互角に戦える者が出現したこと、この衝撃はどちらも大きかった。
 「服部」は強者の代名詞になった。
 これから良くも悪くも服部さんの行動はぷよぷよプレイヤーの注目を集めることになる。そして服部さん自身も変容しているように思える。自分のサイトで上級者向けの緻密なぷよぷよ講座を載せ、ミスケンさんとの試合を惜しげもなく動画公開している。彼は彼自身の強さだけでなく、ぷよぷよのプレイヤー全体の発展を望んでいるのだ。
 しかし日本一になったとしても名古屋ではもちろん地元最強であって、名古屋に集う名だたるプレイヤーの大きな目標であることに変わりはない。
 大会前日の対戦会で服部さんはあまり熱を帯びていなかった。地元の人は敏感に服部さんの変化を感じているのかもしれない。特に、真剣にぷよのことを考えているFALさんには。あのとき、FALさんだけは戦う目をしていた。
 ひとつはプレイヤーFALとして、大きな目標を前にした純粋な闘志。
 ひとつは地元のエースに闊を入れようとする、わずかな憤懣。
 ひとつは自分もぷよぷよの将来を考える身として、最強の者が何をするのか、自分が何をするのか想いをめぐらせる遠いまなざし。
 いくつもの思いが、入り交じっているように見えた。
 FALさんはここまで、えすっちさんに2-1、しるるんさんに2-1、やつかさんに2-1、と辛い戦いを勝負への強い意志で勝ち進んできた。服部さんは1・2回戦と熱い勝負はしていなかったが、どんな状況であれ服部さんは圧倒的に強いのだ。いくら想いが錯綜しようとも、対戦台で向かい合えば目の前の勝負に集中するだけだ。

 1戦目、服部さんのさかな王子は4連鎖全消しの速攻を成功させる。さかな王子は4連鎖のタネをじっくり伸ばし、FALさんのアルルはおじゃまぷよを絡めてギリギリまで伸ばして発火するが7連鎖、さかな王子が9連鎖でまず1勝した。
 2戦目、さかな王子はじっくりと組み、余剰ぷよの消しでアルルに1〜2個のおじゃまぷよを送りアルルを微妙に組みづらくさせている。アルルは本体を途中で消える形にして6連鎖を発火、さかな王子は見切り損ねたのか発火できず潰れた。
 3戦目、アルルはスキなく組んでおりさかな王子は速攻へ行けず組み合う展開になる。さかな王子が2連鎖と1連大量消しでアルルを追い込むがアルルは重目の3連鎖で逆襲しさかな王子は本体発火せざるを得なくなる。アルルは冷静に10ダブを打ち、勝ちきった。

 この戦いが第2回長野大会でもっとも注目を集めた戦いだった。反響の中では「アルルがやはり最強なのではないか?」というものが多かった。確かに服部さんのさかな王子といえども2・3回戦では大連鎖勝負を強いられていてフィーバーの形には持ち込めていない。ただ他の試合では服部さんの速攻が気持ちよく決まっているのでFALさんのアルルが上手いのだと言うこともできる。
 FALさんは見事に存在感を示した。他にも今大会は名古屋勢が4位までをすべて占め、層の厚さを感じさせた。T・Kさん、ひささん、SANAさんなど、極めて温度の高いぷよができるプレイヤーがまだまだたくさんいる。服部さんに、あのミスケンさんとの勝負のような熱い試合が再び現れるとすれば、それは服部さんの地元名古屋から沸き上がってくるだろうという気がしてならない。

(ひささん(アルル) vs FALさん(アルル))
 決勝戦も名古屋のお互い良く知った同士の対決となった。
 ひささんは今回あまり調子良くはなかった。というより彼はフィーバーにはそんなに興味がなく、フィーバーでの戦いに違和感を感じているようなのだ。
 彼の階段積み折り返しは通で鍛えられた。序盤の潰しに耐え、中盤の駆け引きに強い形で彼の折り返しは進化してきている。しかしフィーバーの階段積み折り返しは序盤のリスクをあまり背負わなくて済み、そのためあまり工夫せずにきれいな形を作っていくだけでかなり勝ててしまう。他のプレイヤーと差をつけていたひささんの持ち味がフィーバーでは殺されてしまうのだ。右から3列目が埋まっても負けになる、という変更も右折り返し派のひささんにとっては決して小さくはないだろう。

 1戦目、FALさんはかなりきれいな挟み込み折り返しを作っている。中盤ひささんが3連鎖の催促を先攻したがFALさんはしっかり見切って3ダブで返し、苦しくなったひささんが打った本線崩しに冷静に本線を合わせて勝った。
 2戦目、ひささんは折り返しを組んでから重目の4連鎖で催促を先攻する。FALさんは4連鎖を返すが、ひささんが次に送った3連鎖の催促を返そうとしてフィーバーに入ってしまう。ひささんは即本線8連鎖を発火しFALさんは2回目のフィーバーに入れず負けた。この勝負はひささんの先攻して相手をフィーバーへ入れる作戦が生きていた。
 3戦目、ひささんは先攻の催促に行こうとするがやや形が崩れ重目の2連鎖となった。これにFALさんが3連鎖を合わせ、ひささんが形を整えている間に再度3連鎖を打ち、ひささんを軽く埋めた。ひささんはそこから3連鎖を打つがFALさんは4連鎖で返し、やむなくひささんは本線発火、FALさんは11連鎖で大きく返して勝った。通的に見れば中盤戦を制したFALさんの快勝だが、本線発火前にFALさんにはフィーバーゲージが6溜まっていた。無事フィーバーに入ることなく本線発火できたが、その差はほんの紙一重だった。
 4戦目、FALさんは一気に伸ばし13連鎖を発火するがこれが途中で止まって8ダブになってしまう。ひささんは11連鎖ができていたので発火すれば勝っていた可能性が高いが、見切れずに直撃死した。もしひささんがもう少しフィーバー慣れしていたら、アルルの連鎖ボイスの違いで止まっていたことに気づけたかもしれない。9連鎖以上なら、えい→たぁ→いっくよー→そぉれ→ファイヤー……となるはず。この戦いでは、えい→たぁ→いっくよー→そぉれ→ダイアキュート……だったので5連鎖の時点で9連鎖以前に止まることに気づく。

 決勝はお互い良く知った同士ということで、序盤の動きは少なく、その分中盤のしのぎあいに見応えがあった。
 FALさんはストレート勝ちが一切ないという厳しい戦いを、強い意志と鋭いテクニックで勝ちきり、優勝した。通での豊富な経験で土台がしっかりしており、フィーバーになってもゆるぎなく自分の戦い方ができていたように思う。
 おめでとうございます。




 ぷよぷよフィーバーがアーケードで稼働されたのが2003年の11月。約1年が経過した。
 格闘ゲームで1年も経つと、新作が出たりして「ファイナル大会」というノリになることもあるが、ぷよぷよフィーバーの大会はまだまだ発展途上という感じがする。
 何より、長野の大会に各地から集まっていただけるほど熱心なプレイヤーが多いこと、また参加しないまでも大会の結果を心待ちにしているプレイヤーが多いことを、素直に凄いと思う。ぷよぷよ通は発売から10年経ってもまだ定期的に大会が行われている、これは新しくぷよぷよを始めようという人が次々に現れないとなしえないことだ。
 フィーバーは新しく始めようという人にはチャンスだ。通から続けている人は相変わらず強いが、フィーバーモードに関しては同じスタートラインに立てる。フィーバーモードにしっかり取り組めば比較的速く上位に追いつける可能性がある。ネットに繋ぐ環境があればフィーバーオンラインで、全国の上級者とたくさん対戦できる。通時代には全国数店しかなかった豊かな対戦環境が全国どこにいても得られるのだ。オンラインはレベルが高くて初心者には入りづらいと言われるが、カーバンクルやユウちゃんで1ヶ月くらい速攻とフィーバーモードにとりくめば3〜4割は勝てるようになるはずだ。大連鎖はゆっくり覚えて少しずつ勝率を上げていけばいいと思う。
 フィーバーは対戦の醍醐味が通よりはるかにわかりやすい。ミスケン vs 服部の動画がわかるレベルなら通の対戦も駆け引きが重要で面白いと言えるだろうが、初中級者にとって通はただ組んで発火するだけのゲームに見えかねない。フィーバーは初心者のうちから相殺してフィーバーゲージを溜めることを意識しないとならない、そのため相手の動きに合わせたプレイが必要であり、駆け引きの要素が出現する。中級者になるとフィーバーモードでの伸ばしや潰しなど、フィーバーに関連して戦略的に考えるべきことが増える。相手の動きを予測して自分の行動を決めるという駆け引きは通では上級者にならないとできなかったが、この対戦の面白さはフィーバーではいわば初中級者に開放された。このことも対戦の裾野を広げるのに重要なことではないかと思う。
 ぷよぷよは今のところ唯一の受け入れられた「瞬間的な判断力が問われる頭脳的対戦ゲーム」だ。スポーツもプロの戦いは高度に頭脳的なものがあるが、思考能力よりもまずは身体能力が要求される。一方将棋や碁は純粋に頭脳的対戦だが瞬間的な判断力がゲーム性に直接関連しているわけではない。状況を見て瞬時に判断して行動するのは、人間であれば誰しも日常的にやっていることで、その能力をフル回転させて勝負する「瞬間的な判断力が問われる頭脳的対戦ゲーム」は誰にでもその面白さがわかるはずだ。しかし、これはプレイヤー双方の行動をコンピューターで瞬時に管理できるようになって、はじめて実現できるようになった。その意味でぷよぷよはコンピューター時代になって初めて人類が経験する非常に新しく、かつ普遍的な面白さと言える。
 こう考えると、フィーバーになって、ぷよぷよの裾野はますます広がる可能性がある。将来は将棋や碁のような一般性を持つようになるかもしれない。(SEGAもそこまで考えてか、可能な限り多くの機種に対応し、一般性の高さを目指している)。
 ぷよぷよプレイヤーが増えれば、大きな目標として大会は必要だ。春のSEGA公認東京大会では多くのプレイヤーが頂点を目指してしのぎを削った。もちろん長野大会も高い目標になることを目指しているが、規模が小さい分プレイヤー同士の交流という別の楽しみがある。プレイヤーの裾野が広がれば勝負だけでなく交流も大切なことになるだろう。今まで僕がぷよぷよを通して知り合った人たちはみんな洒落てる人ばかりだ。普通の生活や仕事だけでは到底知り合えないような人たちと知り合うこともできた。ぷよぷよはゲームとして面白いが、ぷよぷよのプレイヤーと普通にいろんな話をするのもとても面白かった。オンラインだけでは味わえないものが確かにあった。
 次回大会は12月26日だ。すでに名古屋・関東を中心に遠征していただける話をいくつか聞いている。頂点を狙うのも、独特の技を見せつけるのも、あるいはただ単にバカ話をしにくるだけでも、ぜんぶ合わせてぷよぷよなのだから気軽にどんどん参加してほしい。オンラインを中心にした戦法の進化は、今回の大会の内容をあっという間に過去のものとしてくれると思う。
 FALさんや服部さんの見ていたものが、どんな形をしているかはわからないが、今ともかくぷよぷよは発展を続けている。長野の対戦会も中心はほとんど10代で、しかもあっという間に強くなるのだ。今ぷよぷよをやっている人の中で、初代のころからやっている人たちはむしろ少数派だろう。末永く愛されるゲームとして、オンラインだけでなく、地域に根ざした実際に会える同士での対戦コミュニティがもっと各地に現れるといいなと思っている。長野大会は幸い盛況で次回大会も開けそうだけど、他にももっと各地で大会が開かれてほしい。

 長野大会はゲームセンター(AMUSEMENT PARK NASA)の多大な協力を得ることで、動画公開などができています。金沢さんはじめ店員のみなさまがたに感謝いたします。
 また、たくさんの遠征者のおかげで面白い対戦が実現できています。御遠征ありがとうございます。大会を注目してくださるプレイヤーの方々も有り難い限りです。今後ともよろしくおねがいいたします。
 次回大会は12月26日です。みなさまふるってご参加ください。

 今回総括は特別に長文となってしまいました。最後までおつきあいくださいまして誠にありがとうございました。(文責=HAINA)


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