(服部さん(さかな王子) vs FALさん(アルル))
2004年5月、今は無き明大前ナミキで行われたミスケン vs 服部100本勝負はぷよ界にとって特別な意味を持っていた。ミスケンこと三須健太郎さんは、不定形の草創期から活躍し、長くぷよ通対戦日本一と謳われ誰にもその座を譲らなかった。しかし先に行われた30本先取は服部さんが取り、場は騒然とした。二人はその熱さをぶつけあい、意を決して全く予定になかった100本勝負を開始した。その対戦画像が今服部さんのサイトで少しずつ公開されており、これは紛れもなく今ぷよぷよにおけるいちばん貴重な宝物だ。
二人はほぼ互角の戦いをした。しかしミスケンさんは残念なことに仕事のためにぷよぷよの第一線を離れることになる。
ミスケンさんが引退すること、ミスケンさんと互角に戦える者が出現したこと、この衝撃はどちらも大きかった。
「服部」は強者の代名詞になった。
これから良くも悪くも服部さんの行動はぷよぷよプレイヤーの注目を集めることになる。そして服部さん自身も変容しているように思える。自分のサイトで上級者向けの緻密なぷよぷよ講座を載せ、ミスケンさんとの試合を惜しげもなく動画公開している。彼は彼自身の強さだけでなく、ぷよぷよのプレイヤー全体の発展を望んでいるのだ。
しかし日本一になったとしても名古屋ではもちろん地元最強であって、名古屋に集う名だたるプレイヤーの大きな目標であることに変わりはない。
大会前日の対戦会で服部さんはあまり熱を帯びていなかった。地元の人は敏感に服部さんの変化を感じているのかもしれない。特に、真剣にぷよのことを考えているFALさんには。あのとき、FALさんだけは戦う目をしていた。
ひとつはプレイヤーFALとして、大きな目標を前にした純粋な闘志。
ひとつは地元のエースに闊を入れようとする、わずかな憤懣。
ひとつは自分もぷよぷよの将来を考える身として、最強の者が何をするのか、自分が何をするのか想いをめぐらせる遠いまなざし。
いくつもの思いが、入り交じっているように見えた。
FALさんはここまで、えすっちさんに2-1、しるるんさんに2-1、やつかさんに2-1、と辛い戦いを勝負への強い意志で勝ち進んできた。服部さんは1・2回戦と熱い勝負はしていなかったが、どんな状況であれ服部さんは圧倒的に強いのだ。いくら想いが錯綜しようとも、対戦台で向かい合えば目の前の勝負に集中するだけだ。
1戦目、服部さんのさかな王子は4連鎖全消しの速攻を成功させる。さかな王子は4連鎖のタネをじっくり伸ばし、FALさんのアルルはおじゃまぷよを絡めてギリギリまで伸ばして発火するが7連鎖、さかな王子が9連鎖でまず1勝した。
2戦目、さかな王子はじっくりと組み、余剰ぷよの消しでアルルに1〜2個のおじゃまぷよを送りアルルを微妙に組みづらくさせている。アルルは本体を途中で消える形にして6連鎖を発火、さかな王子は見切り損ねたのか発火できず潰れた。
3戦目、アルルはスキなく組んでおりさかな王子は速攻へ行けず組み合う展開になる。さかな王子が2連鎖と1連大量消しでアルルを追い込むがアルルは重目の3連鎖で逆襲しさかな王子は本体発火せざるを得なくなる。アルルは冷静に10ダブを打ち、勝ちきった。
この戦いが第2回長野大会でもっとも注目を集めた戦いだった。反響の中では「アルルがやはり最強なのではないか?」というものが多かった。確かに服部さんのさかな王子といえども2・3回戦では大連鎖勝負を強いられていてフィーバーの形には持ち込めていない。ただ他の試合では服部さんの速攻が気持ちよく決まっているのでFALさんのアルルが上手いのだと言うこともできる。
FALさんは見事に存在感を示した。他にも今大会は名古屋勢が4位までをすべて占め、層の厚さを感じさせた。T・Kさん、ひささん、SANAさんなど、極めて温度の高いぷよができるプレイヤーがまだまだたくさんいる。服部さんに、あのミスケンさんとの勝負のような熱い試合が再び現れるとすれば、それは服部さんの地元名古屋から沸き上がってくるだろうという気がしてならない。
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