Phase 1 霧のゆくえ

イファ:すべてのものが青白く色をなくした空間、霞む山肌を伝い、天空から雲が降りてきたかのような深い霧 身はひんやりと湿らされ、自分までも白の一部とされてしまう 足を止め、冷気に身をゆだねると、心地よい完全な静寂 突然ごう、と風がうねり、乳白のカタマリが迅捷に湖水から森へと向かう 目の前で、姿を変えながら、いくつも ちぢれ、つむぎあい、身をひるがえしながら 「森へ……」「森だよ……」樹木のざわめきの中、私はかすかにさざめく声を聴いた
ルィノ:むー、隠密行動には霧がツキモンだからネ
イファ:なんなら、それ?
ルィノ:白い服着て、霧にまぎれて敵陣侵入、と
イファ:侵入してどうする
ルィノ:同時多発テロ……うわぁ、痛ったぁ、何すんのん?
イファ:シャラーップ!! ノリだけでアリガチにネタ引っ張るな!!
ルィノ:うぃっす 暴力反対、テロ反対、グーでのツッコミ反対の方向で

ルィノ:これは?
イファ:山裾から沼沢湖に霧がドトウのイキオイで降りて来る瞬間 朝5時半頃だよ
ルィノ:チョと龍みたいにも見えるネ
イファ:こんなん見たら、湖に大蛇が住むって言われるのもわかるなー 上空少しだけ霧が晴れて、わずかに朝焼けが差し込んでびっくりするくらいキレイだったのだよー

ルィノ:早起きは三文の得だネ 豆腐屋さんみたい
イファ:豆腐屋言うな
ルィノ:ここはね、しん、と静まり返って、音もなくさぁーっと霧が降りて来る様子をご想像ください
イファ:いや ゴゴゴゴゴって音立てるんだよ
ルィノ:うそつくなー うそ言うと豆腐屋になれんよ

ルィノ:おお、豆腐屋だけに白だ
イファ:しつこいからやめれー 良く見てよ、これは霧の向こうにかすかに太陽が見えてるの
ルィノ:ほほう
イファ:ほんとはね、霧も動くし、あわせてキラキラと輝くし、この世でナイどこかってくらいの印象だったんだけど、伝わらなくてザンネンです
ルィノ:これくらいが、金山では日常でアリマス
イファ:この霧の中に妖精さんがいるのねー
ルィノ:群れをなして隠密行動ー……あ、グーでのツッコミ反対

ルィノ:こういうのはどでしょか?
イファ:これは金山とはチョと違うけど、只見川だねー
ルィノ:冷えた川面に白い霧が沸き立ち、中州がまるで雲の上の島のようです
イファ:霧は山よりいで、湖に降り、風に乗って山をかけのぼるのです
ルィノ:そのさまが、まさに妖精さん 霧に守られている、との錯覚を覚えたらもうすでにそれは妖精の角川氏
イファ:かどわかし
 

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