フェルミ-リーナ号航海日誌 〜思いつき的SF短編連作
「カップルかー、『夫婦』って言葉は、地球にはもうないのかもなー。とっくの昔にここでは子供を産むこと禁止になってんだよね?」
 フェスティバは組んだ足の上に肘を乗せて、ふくれっ面でほおづえをついていた。
 ひざの上に眠るリノの翼をそっと包むようになでながら、マイカはひとりごとのように答えた。
「みんな歳取らなくなったからね。今じゃ辺境に行かないと子供作れない」
夜の底は柔らかな幻 〜二人の少女の魔法修行時代 長いです
 ちいさな影──アキは、登っていく先を見上げた。太陽と、あざやかな空を背に、くっきりと人影が映える。
 誰もいるはずのない魔法の草原。……しかし、黒髪の少女は、存在があたりまえに感じてしまうほど、ここのやわらかな空気になじんでいた。
 ──かみさまがいるの?……──
 アキはそう思った。
 すべてを包みこみ、ひとしくあたためる春の女神。
 すてきな、この空間は、もしかしたらかみさまのものかもしれない。
目の見えない女のコの話 〜チャット中、暴走してアドリブで書き上げた寓話
 木の葉のリズムも北から南へ、地下水のささやきも北から南へ。少女にだけわかる光の道は南へとのびていました。
 毎日違うところに現れる妖精の草原。光の道はそこへと伸びているのです。

姫さまの羽 〜ティンカー&リンカーが主人公
 天高く、抜けるような初夏の青空! おせんたくものはすっかり乾いて、顔を寄せると太陽の匂いがします!
 ふわふわの、とっても気持ちいいせんたくもの、ぜんぶ取り込んだら、もとの小さな妖精さんの姿に戻って、空高く飛んで行きたいです。今日は風がとっても気持ちいいんだから。
ハリガネゲーム 〜子供シリーズをやろうとして1回で飽きた
 僕らは、それを「ハリガネゲーム」と呼んでいた。
 たとえ20円や50円でも、小学生のこづかいには堪える。そこで、悪知恵を働かせた誰かが、ハリガネをコイン投入口に差し込むことを思いついたのだ。
 先をカギ状に曲げて、全体を弓のようにしならせ、そっとコイン投入口に差し込んで手応えがあるまでゆっくりと探りを入れる。
詩篇 〜気が向いたら増えます
 幼い身体に、大人の言葉を持った少女は、
 自らの神なるを知らず、
 神でない人間の哀しさを知らず、
 朽ちる運命のものを恋し、
 「ずっと、同じ姿のままで、彼を待ちつづけよう」と思った。